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「カヴァレリア・ルスティカーナ」
&「道化師」体験記
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Kuwanissimoにとって最もなじみの深いオペラがこの「カヴァレリア・ルスティカーナ」といえます。 なんといってもオペラにハマるきっかけとなった学生時代のサークル、明治大学混声合唱団(以下、明混)に入団した最大の理由が、先輩方が歌って下さった「カヴァレリア・ルスティカーナ」の「復活祭の合唱」にとても感動したからなのです。 そして今所属しているコーロ・ディ・メイコン(明混のOB&OG合唱団。以下、メイコン)の最も得意とするレパートリーでもあり、おそらく一番演奏頻度の高い曲でもあります。 イタリア演奏旅行の際に、演奏会以外でも何度か歌ってくれるように頼まれましたが、そんなときに決まって演奏したのもこの「復活祭の合唱」の一節でした。 そんなこともあって、この「カヴァレリア・ルスティカーナ」の、とりわけ「復活祭の合唱」は私にとって特別の思い出のある曲なのです。


する「パリアッチ」はというと、「カヴァレリア」と対になって上演される例が多いので度々聴いたことがあり、とても好きな曲であるとはいえ過去一度も歌ったことのない曲ばかりでした。 と書くと、注意深い方は、「オイオイ、唯一出演したことがあるのが『道化師』じゃなかったんかい?」とおっしゃるかもしれません。 たしかに過去「東京アルテ・シェニカ・オペラ研究所」の公演に出演したことはあるのですが、このときは同時公演の「外套」に出演していて、「パリアッチ」の劇中劇の観客人数を水増しするために急遽出演しただけで、実のところ一切歌っていなかったのです。


イコンの先輩を通じて出演の誘い(助っ人依頼)があり、ニュー・オペラ・プロダクション(NOP)の練習に初めて参加したのが、公演まで3ヶ月を切り、音楽稽古は後数回残すのみでまもなく立ち稽古に突入!という時期でした。 「カヴァレリア」の方は出演経験こそ無いものの、ほとんど全ての合唱曲を過去の演奏会で歌ったことがあったのでさほど不安はありませんでした。 しかしながら全く初めて歌う「パリアッチ」は曲も非常に難しく、果たして間に合うのかと甚だ不安でした。 唯一の救いは曲を何度も聴いたことがあったので、複雑な転調には感覚的について行けたことでした。 激しく変わる転調に他の人はかなり苦労していたみたいです。 ちなみに話をくれた先輩は都合により出演できなくなったので、メイコンからの出演者はKuwanissimo一人となりました。


れから1ヶ月ほどは来る日も来る日も「パリアッチ」漬け。 通勤時もヘッドホンステレオを手放しませんでした。(普段は鬱陶しいのでヘッドホンはほとんど使いません) おかげで立ち稽古も中盤に入る頃には一応楽譜を手放して練習できるまでになりました。 皮肉にもその後最も苦労させられたのは「カヴァレリア」の「馬車屋の合唱」だったのです。 ココだけの話、この曲ばかりは本番でも正しく歌えたかどうか請け合えません。 でも、もう時効ですよね。(^_^;)


習が格段に面白くなったのは、やはり立ち稽古に入ってからです。 最初はみなどうして良いのかわからず、途方に暮れています。 それを演出家の杉先生がシーンごとにおよその立ち位置を決めてゆきます。 その際、大抵は男女ペアになります。 ところでここに来ている女声たちは、プロのオペラ歌手になるべく現在歌と演技を勉強している杉オペラ演技研究所の研究生と、その他音大の学生などの「助っ人」たちです。 およその年齢構成は私+−10歳といったところでしょうか。 私よりは若い方の方が多かったかもしれません。 合唱のとあるオッサン、もとい、中年男声の言葉を「意訳」しますと、「ここの合唱団の女声はあまりご高齢の方がいらっしゃらず、楽しい」のだそうです。 オッサン予備軍(のつもり!)の私としては、あまり数多くの合唱団を渡り歩いているわけではないので「そんなものか」と思いました。 ましてや音大から助っ人として参加していた学生の男声達にとっては少々異論のある意見だったかもしれません。 しかし、私より一回りほど年上のそのオッサン、もとい、中年男性によると、合唱団によっては彼が最年少ということもままあるそうです。 ともあれ、私としても妙齢の女声とペアになってオペラを演ずるというのは、とても心楽しいことであります。


が妙な方向にそれましたが、誤解の無いように申し上げておきますと、私としてはあくまで歌と音楽と演技を楽しむために参加しているのです!(力説) 「なぜそこまで力説する必要がある?」などと余計な突っ込みはしないように。 話を元に戻しましょう。 立ち稽古で人同士が絡むようになれば、当然打ち合わせも必要になり、そこに新たな会話が生まれます。 会話が生まれれば親睦を深めたくなるのが人情です。 親睦を深めるのに一番良い方法は何でしょう? 答えは「酒」です。 すなわち練習後に飲みにゆくのは人間として必然の流れなのです!(力説) ということで、一部のグループは練習後に毎回のように飲みに行っておりました。 グループ所属の学生の一人がグループに名前を付けました。 命名、「カメラータ・ノムカ」。 私がそのグループに所属していたのは言うまでもありません。(^_^;)


たまた話がそれてしまいました。 本題に戻ってそろそろメインキャストの話をしましょう。 今回は韓国から3名のキャストが出演されていました。 その中の一人、「カヴァレリア」のトゥリッドゥ役の李 火玄(イ・ヒョン)さんは、カオもカラダも声も、ものすごく堂々としていました。 かなりの巨漢といって良いでしょう。 「カヴァレリア」のキャストではイチオシです。 後ほど各オペラの解説をアップする予定なのでそこで詳しくお話ししますが、トゥリッドウという青年は割とヤサ男タイプで、強くて人気者の恋敵アルフィオに無謀な決闘を挑んで最終的に殺されてしまいます。 今回のアルフィオ役は、声と演技は素晴らしいけれども体格的には割と小柄な工藤博さんです。 困ったことに今回のトゥリッドウはアルフィオにどう見ても負けそうにないんですね。(^_^;) まあそんなことは関係なく、やはり劇では負けます。 声から言えば正に適材適所の配役ですが、外見が伴わない例がままあるのがオペラという出し物のの一つの特徴でもあると思います。


ヴァレリア」のメインキャストの女声陣は、声も容姿も正に適材適所といえたと思います。 ローラ役の堪山貴子さんは美しく、声も演技も素晴らしかったし、サントゥッツァは・・・。 サントゥッツァ役は当初、青山智英子さんが予定されていましたが、体調を崩し、アンダーの出来田三智子さんに交替しました。 出来田さんは、このトゥリッドウ(李 火玄氏)に似合うサントゥッツァはこのヒトしかいない!という印象の人です。 正に適材適所、でしたねぇ。(^_^;) サントゥッツァはソプラノが歌うこともありますが、メゾソプラノの方が多いでしょう。 出来田さんもおそらくメゾだと思われます。 トゥリッドウの母、マンマルチア役の加納里美さんもメゾでしょう。 当初出来田さんと区別が付きませんでした。 ローラもメゾの場合がほとんどだと思われるので、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のようにソプラノがいない(ことのある)オペラも意外と珍しいかもしれません。


国組の残りの二人は「パリアッチ」に出演しました。 今回、両演目を含めてのKuwanissimoのイチオシがネッダ役の李 恩順(イ・ウンスン)さんです。 このヒトは良いですねぇ。 Kuwanissimoの好きなソプラノの中で、確実に5指に入ります。 おそらく四十代にはなってると思いますが、若々しくて可愛いんです。 声も演技も素晴らしい! 二期会に所属していて日本語も達者のようです。 しばしば通訳も務めていらっしゃいました。 一方で最後までハラハラさせられたのがトニオ役の柳 顕丞(ユ・ヒョウンスン)さんです。 声も演技も大変役にハマっていて良いのですが、練習中出忘れはするわ、太鼓のリズムは覚えられないわで、ハタから見ていて相当不安でした。 それでも本番ではチャンと決めてくれました。 流石プロ?ですね。


ニオ役の柳さんとは別の意味で心配させられたのは、主役のカニオ役、田口興輔さんです。 なにせ練習中ほとんど全く歌わないのです。 役は演じますが、歌は全てアンダーの人任せです。 アンダーがいないときは鼻歌です。 かなり高齢の方でしかも他のオペラと掛け持ちしていたらしいので、声を維持するためにやむを得ないのかもしれません。 しかしゲネプロも含めて終始一貫鼻歌で通すというのは相当なものです。 このヒト本当に大丈夫なんだろうか、と思ってしまいました。 それでも本番ではやはりチャンと決めてくれるのは、流石プロですね。 シルヴィオ役の黒田 博さんは、ネッダでなくても浮気したくなるのではないかと思えるほどの男前です。 声も素晴らしく、やはり適材適所ですね。 ペッペ役の吉田伸昭さんもハマっていました。 声があまり飛んでいなかったのがちょっと気になりましたが・・・。


揮者の十束尚宏さんは、わかりません。(^_^;) 個人的には、イマイチ拍子のとりにくい指揮に見えます。 特に「パリアッチ」の最後の場面、カニオが怒り狂ってネッダとシルヴィオを刺し殺してしまう場面は指揮が命綱です。 ここがどうもうまくまとまらないんですね。 各パート出るタイミングがわからないんです。 まあ、全員がパニックになっている演技中に指揮を見るのは至難の業、ということもあるけど、これは指揮も原因の一つだったと思われます。 ここも結局本番で納得のいくように歌えなかった場面です。 既に本番から1年以上経過しているので少々記憶が薄れていますが、その他の曲作りや音楽的指導法等についてもあまり印象に残っている部分はありません。 ただ合唱指揮の千葉芳裕さんが、十束さんの指揮を真似るのに結構苦労していたように見えました。


出家の杉 理一先生の第一印象は「好々爺の典型」でした。 今もその印象はあまり変わっていません。 まあ「爺」と言うには背も高く、背筋も伸びて行動も割に機敏ですから、「典型」とまでは言えないかな。 印象に残っているのは、とあるシーンで合唱一人一人の行動を決めるときのことでした。 「あなたはこう、あなたはこう・・・」と次々と裁きながら、誰にだったかは忘れましたが「あなたは・・・」といってその人の方に手を置き、日光猿軍団の「反省」ポーズのまましばらく考え込んでしまったことです。 その間周囲の誰一人微動だに出来ず、思わず固まってしまったのです。 原因不明のフリーズ状態でした。(^_^;) そんなお茶目?な面もありますが、演出家としても人間的にもとても素晴らしい方だと思います。


ょっと練習の話に戻ります。 練習で一番苦労したのはやはり如何に動くか、です。 なかでも「パリアッチ」で、トニオの前口上の後の劇団が街にやってくるシーンなどは、みんなで「来るぞ、来るぞ」と騒いでいるわけですが、実際にパリアッチョが登場するまでの「間」を持たせるのがえらく大変なのです。 突っ立って歌っていたらワクワクしている様子にはならないし、子供ならともかく(子供達も数名出演しました)大人が無意味に駆け回るわけにもいかない。 とりあえずおよその場所を決めて、周囲の人たちと大げさなジェスチャーを交えて話しながら、指さしたり手を振ったりしてごまかすのです。 観ているとわりとあっという間なんですが、やる方にとってはとても長い時間です。 2幕の冒頭の、劇中劇が始まる前にみんなで盛大に席取り合戦をする場面も異様に長く感じるんですね。 動きが決まらない打ちはかなり不自然なことをしている人も、自分を含めて沢山いたと思います。 しかしそんななかで周りと相談しながら(もちろん、演出家の指示も聞きながら)動きを決めてゆく過程はとても楽しくもありました。


リアッチ」の動きが難しいだけに立ち稽古の頻度も「パリアッチ」に傾きがちで、こんなんで「カヴァレリア」は大丈夫なのか?と心配になるほどでした。 「カヴァレリア」だって「パリアッチ」ほどではないにせよシロウトにとって演技は難しいのです。 しかしそこはちゃんと計算してあったのでしょうか、最終的には何とかなってしまうものです。(何とかなっていたんだろうか?) 肝心の公演の成否はというと、かなりうまく行ったほうなんではないでしょうか? 後ほどビデオで見た限りでは、メインキャストの方々はやはりプロらしいしっかりした歌と演技でしたし、合唱もそれほどヘンなところがあるようには見えませんでした。 もっとも自分の写っている場面はホンのちょっとしかなかったんですけどね。


しかっただけに本番はアっという間に過ぎてしまった気がしてます。 その後の打ち上げでは何人もの人が2次会になだれ込み、オールナイトで騒いだものです。 一部その後もつきあいのある人たちはいますが、所属している団体ではなく、助っ人として参加したこういうイベントで知り合った仲間というのは基本的に「一期一会」です。 実際は練習の間何度も会っていますが、それでも一つのイベントの間だけです。 練習も含めて一大イベントなのです。 みんなで一つのものを一所懸命作り上げて、パッと一夜の花を咲かせて終わり。 少し寂しい来もしますが、だからこそ楽しいのかもしれません。 この世界(オペラ)は意外と狭いので、次のイベントに参加したとき、偶然昔の仲間と出会うこともあります。 それもまた楽しからずや、です。 やっぱりオペラは当分やめられそうにありません。 やめる気もありません。 出来れば一生続けていきたいですね。 ということで、このあとにキャストやスタッフの方々のお名前をご紹介して「カヴァレリア・ルスティカーナ」&「パリアッチ」の体験記はおしまいです。 最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。


作品データ
ニュー・オペラ・プロダクション第9回公演(原語上演 字幕付)
歌劇"Cavalleria Rusuticana"(全1幕)
作曲 ピエトロ・マスカーニ "Pietro Mascagni"
原作 ジョヴァンニ・ヴェルガ
台本 グィード・メナッシ&タルジョーニ・トツェッティ
歌劇"Pagliacci"(全2幕)
作曲・台本 ルッジェロ・レオンカヴァルロ "Ruggero Leoncavallo"
キャスト
Cavalleria Rusuticana
サントゥッツァ 出来田三智子
トゥリッドゥ 李 火玄(イ・ヒョン)※注「火玄」は一文字
アルフィオ 工藤 博
ローラ 堪山貴子
ルチア 加納里美
Pagliacci
カニオ 田口興輔
トニオ 柳 顕丞(ユ・ヒョウンスン)
ネッダ 李 恩順(イ・ウンスン)
シルヴィオ 黒田 博
ペッペ 吉田伸昭
協演 杉オペラ演技研究所研究生
合唱 カメラータ・リリカ
管弦楽 東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
Kuwanissimoの役所 民衆(合唱(両曲))
スタッフ
指揮 十束尚宏
演出 杉 理一
合唱指揮 千葉芳裕
美術 西川成美
照明 成瀬一裕
メイク きとう せいこ
舞台監督 幸泉浩司

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最終更新日:2001年6月20日(水)